
軽度の出っ歯とは?判断の基準と目安
出っ歯の見え方や感じ方には個人差があります。上の前歯がわずかに前に出ているだけで「出っ歯」と感じる人もいれば、かなり前に突き出していても気にならない人もいます。
歯科の専門用語では、出っ歯は「上顎前突(じょうがくぜんとつ)」と呼ばれ、診断には明確な基準があります。一般的に理想的な噛み合わせでは、上の前歯は下の前歯よりも約2〜3mm前に出ています。これが4mm以上になると、「上顎前突」の傾向があると判断されます。
そのほかにも、以下のような特徴が出っ歯の目安になります。
・歯が前に傾いており、唇を閉じにくい
・上の前歯2本が大きく目立つ
・横顔で口元が前に出て見える
・口を閉じたときに顎に梅干し状のシワができる
・笑ったときに前歯が強調される
わずかな出っ歯でも放置は要注意!考えられる3つのリスク
「少しだけだから大丈夫」と出っ歯を放置していると、さまざまなトラブルを招く可能性があります。見た目の問題だけでなく、口腔内や体全体の健康にも影響を及ぼすことがあるため、注意が必要です。
1. 虫歯・歯周病のリスクが高まる
出っ歯になると口が閉じにくくなり、口腔内が乾燥しやすくなります。唾液の分泌量が減ることで、汚れや食べかすが流れにくくなり、虫歯や歯周病、さらには口臭の原因にもつながります。
2. 食事に支障が出る
前歯で食べ物を噛み切りにくいことが、奥歯での咀嚼も回数が減りがちになることにつながり、消化不良や食べ過ぎの原因になることもあります。
3. 出っ歯がさらに悪化する可能性も
正常な舌の位置は、口を閉じた状態で上顎の内側にあることです。しかし、口呼吸が習慣化すると舌が下がり、唇の筋力も低下。結果として、前歯がさらに前方に押し出され、出っ歯が進行してしまうことがあります。
軽度の出っ歯には部分矯正という選択肢も
軽度の出っ歯の場合、すべての歯を動かす全体矯正ではなく、**前歯など一部の歯だけを整える「部分矯正」**でも改善できることがあります。
部分矯正のメリットは以下のとおりです。
・動かす歯が少ないため、治療期間が短い
・費用を抑えやすく、経済的
・大きな移動を必要とせず、気軽に始めやすい
ただし、以下のようなデメリットも理解しておく必要があります。
・歯の移動スペースが不足しやすく、削合(歯間調整)が必要な場合が多い
・後戻りしやすいため、保定が重要
・噛み合わせのズレには対応できないことがある
次に、軽度の出っ歯に対応する代表的な部分矯正の方法を3つご紹介します。
軽度の出っ歯に対応する主な治療法3選
① インビザライン(マウスピース矯正)
インビザラインは、透明なマウスピースを使って歯を少しずつ動かす矯正方法です。
目立たず、取り外しが可能なため、食事や歯磨きも普段どおり行えます。
メリット:目立たない/通院回数が少ない
デメリット:自己管理が必要/重度には不向き
② ワイヤー部分矯正(前歯だけの矯正)
前歯だけにワイヤーとブラケットを装着し、出っ歯の前歯を整える方法です。
歯の移動に高いコントロール性があり、比較的短期間で効果が出やすいという特徴があります。
メリット:調整が効きやすく、治療期間も短め
デメリット:装置が目立ちやすい/装着中の違和感がある
③ セラミック矯正(補綴による修正)
歯を削り、**セラミックの被せ物(クラウンやラミネートベニア)**前歯の形や角度を調整する方法です。矯正というより審美治療に近く、短期間で見た目を改善したい方に向いています。
メリット:即効性があり、見た目を整えやすい
デメリット:健康な歯を削る必要がある/将来的なメンテナンスが必要
全体矯正と部分矯正の違いとは?
歯並びの乱れには、歯の位置だけでなく骨格の影響が関係していることもあります。矯正治療は大きく「全体矯正」と「部分矯正」に分かれ、それぞれ目的や適応範囲、期間・費用が異なります。
■ 全体矯正とは
全体矯正は、前歯から奥歯(親知らずを除く)まで、上下すべての歯を対象とした矯正治療です。
・噛み合わせを含めた全体的な改善が可能
・噛む力のバランスが整い、歯の寿命が延びる効果も期待
・治療範囲が広いため、費用・期間がかかる
■ 部分矯正とは
部分矯正は、主に上下の前歯12本程度を対象とした治療で、歯並びの見た目改善に適しています。
・動かす歯が少ないため、費用や治療期間を抑えられる
・噛み合わせの改善は難しく、適応できる症例が限られる
・後戻りしやすいため、保定(リテーナー)が重要
部分矯正ができないケースと治療時の注意点
部分矯正は、主に前歯の歯並びを整える比較的軽度な矯正治療ですが、すべての症例に対応できるわけではありません。ここでは、部分矯正が適さない条件と治療時の注意点をご紹介します。
■ 部分矯正ができない主な条件
歯の重なりが強い場合
前歯のガタガタが大きく、歯が重なっているケースでは、歯を並べるためのスペースが足りないことが多く、抜歯が必要になる場合があります。部分矯正では抜歯を伴う治療は難しく、全体矯正が必要です。
重度の出っ歯
上の前歯が大きく前に出ている場合は、歯を後ろに下げるスペースが必要になります。そのためには奥歯の移動や噛み合わせの調整が必要となり、部分矯正では対応できません。
開咬・過蓋咬合などの咬合異常
前歯が噛み合わない「開咬」や、上下の歯の噛み込みが深すぎる「過蓋咬合」は、骨格的な原因が関係していることもあり、外科的治療が必要になることも。これらの症状は部分矯正では対処が難しいため、全顎矯正が推奨されます。
■ 部分矯正の注意点
噛み合わせが悪化するリスク
部分的に歯を整えても、上下の噛み合わせのバランスが崩れると、全体的な咬合に悪影響を及ぼすことがあります。とくに上顎だけの矯正は注意が必要です。
後戻りしやすい
矯正後は歯が元の位置に戻ろうとする「後戻り」が起きやすく、保定装置(リテーナー)の装着が不可欠です。奥歯の嚙み合わせのアンバランスで再び前歯が押され、歯並びが崩れることもあります。
歯を削る必要がある場合も
歯を動かすスペースを確保するため、歯と歯の間をわずかに削る(ディスキング)処置が必要になることが多いです。削るのは表面のエナメル質のみで、痛みやしみる心配はほとんどありません。
少しの出っ歯でも、お気軽にご相談ください
「出っ歯」といっても、その状態や原因は人それぞれ異なります。一宮にある脇田歯科では、お一人おひとりの歯並びや噛み合わせを丁寧に診断し、わかりやすくカウンセリングを行っています。
「前歯がちょっと気になる」「周囲には気づかれないけど、自分では気になる」など、わずかな違和感でも構いません。気になる症状がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。